2月のバスタイム読書の1冊!
教養コンプレックスによるミーハーな軽い動機から読み始めた1冊ですが、、、
入門編の自分としては読みやすくて、面白く学びのある1冊でした!
デザインは「解決」アートは「問い」
広告デザインの中では、
「デザインはアートではないからね」という文脈がよく語られます。
デザインというのは、自己表現のためのアートとは違って、クライアントの「課題を解決する」ことが目的なんだよ、という教え。
それをずっと聞いていたので、、、
デザイナーが生み出すのが『解決策(答え)』であるのに対し、アーティストが生み出すのは『問いかけ』である。
今さらながらこれが目からウロコで、
すごく腑に落ちた解説でした。
いろいろ問題提起の多い時代、マンガもひとつの手段だけど、問いかけそのものに注目を集めることが大事なステップで、その表現として「アート」を捉えることで、すごく興味がわいてきました!!!
パウル・クレーの主著『造形思考』(ちくま学芸文庫)には、「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、見えるようにすることにある」とあります。
問題を提起するのに、
くどくど伝えても声は届かない。
「本質」がどこにあるか、
「見える」ようにするために、
引き算と切り口を煮詰めたものが
現代アートの目指すものだったのかもしれない!
思考する糸口としてのアート
問題提起だったり、
そこから糸口となって、
展開する思考ストーリー。
単体だけでインパクトとメッセージが完結する表現もあるのかもしれないけど、、、
アートを面白くもむずかしくもするのが
「美術史の文脈」なのだそう。
何が現代アートになるための要素なのか。それは考え方に軸足を置くということです。
「美」を広く哲学的に捉えて、強いていうのであれば「現代社会の課題に対して、何らかの批評性を持ち、また、美術史の文脈の中で、なにがしかの美的な解釈を行い、社会に意味を提供し、新しい価値をつくり出すこと」といえるでしょうか。
オマージュやパロディにしても。。ただリスペクトだけでネタ的にトレースしたものではなく、
そこに新しい解釈やアイディアがあることで、、
なるほど、そういうことか!
と元ネタに対する理解や解釈までもが、
深まったりする体験はすごく楽しい!
そういう意味では、
文脈のなかで捉えることで、
グッと面白くなるのワカル!!!!
「文脈」と「解説」
ただ一方でこの「文脈」ってやつが、
なかなかのクセモノで……。
でも、今はすぐググれる時代!
元ネタをもともと知らなくても、
「解説」があることで作品がグッと面白くなるんだなというのを知りました!
界王様がいることで、
直接的には語られない悟空の強さとかピンチの度合いが読者にも可視化されるわけで。
超重要な役!!!
現代アートの3大要素
そんな中で「現代アート」を見る上で、
注目すべき3要素のひとつとして、、
①インパクト
②コンセプト
③レイヤー
という見方も紹介されていて、
この「レイヤー」という部分が深みを感じるところであり「解説」が重要な役割を担うところ。
筆者がもっとも尊敬する、すでに故人となったアメリカの現代アーティストのウォルター・デ・マリアは、常々、「いい作品とは、いくつもの解釈ができる作品のことだ」そして「いい作品とは最低でも一〇種類ぐらいの異なった解釈ができるものだ」と言っていました。
アニメやマンガとかの作品も、いろんな解説本や記事が出回る作品がやっぱり魅力が深い。
と考えると理解しやすいなと!
大きな思想・小さな日常
大きな思想と日常とを結ぶ禅
禅こそ、現代アートの思想傾向でお話しした哲学的な視点と日常的な視点を同時に持つ宗教です。
多くの宗教が「大きな思想」にのみ注意を向ける傾向があるのに対して、禅は「大きな思想」と「小さな日常」のギャップを埋め、両者の両立を目指して日々の修行=生活を送る実践の宗教です。
禅といえば、スティーブ・ジョブズが晩年ハマったとして注目されたりするわけですが。
福井に行ったときに、
禅宗・曹洞宗の総本山「永平寺」に行ったばかりだったこともあり、現代アート思考との共通性とあいまって「日常=実践」という禅の考え方にグッと興味が高まります!!
インスピレーション < 日々実践
これはいろいろと耳が痛いのですが…笑
「インスピレーションを待っていたら何も書けない。私は毎朝必ず作曲をする。そうすると神がインスピレーションを送り込んでくださるのだ」
小説家の村上春樹も雑誌のインタビューで、こう答えています。
「とにかく自分をペースに乗せてしまうこと。自分を習慣の動物にしてしまうこと。一日十枚書くと決めたら、何があろうと十枚書く。」
ごもっとも!!ぐうの音も出ませぬ!!!
いやほんと、アートというと直感とインスピレーションの世界のような気がしていたのですが。
愚直なほどに、テーマに向き合う日々の問いの積み重ねというか、、、漆塗りみたいに塗り重ねたものの厚みなんだなあ、という新たな理解を得た気がしました。
アート産業のビジネスセンス
アーティストのアプローチや内省といった話だけではなく、それをビジネス面・産業として、どう成り起こってきてるのか構造などを紐解くパートも面白い。
こういった一大観光産業、文化産業をつくり出すイタリア人のビジネスセンスは、日本人も見習う必要があるでしょう。ローマ時代にまで遡ることができる文化資産を持ち、イタリアルネッサンス期には、ローマ、フィレンツェ、ヴェニスなどが栄え、そこで花開いた文化は、いまだにヨーロッパ人の憧れです。
ただ素敵な才能が自然に集まって、
素敵なアート文化が自然に華ひらいていくのではなく、それはそれで、したたかなビジネスとして構造があるんだなぁと。
これまた、ここ最近、イタリアのブランディング精神とかに触れて思ってたこととつながったり。
アートとか演出とか、
そういうのを考えるセンスが全然なかったので。
インプットをもっともっと増やして勉強して、
そうした解像度を高めていきたいなあというのが40代のテーマになりそうです。
刺激がいっぱいの1冊でした!